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"エクソダスフロム日本"
無事にiPodを購入して新宿駅に戻ると、まずそこらへんの駅員に成田エクスプレスの乗り場を聞く。すぐに教えてくれたが、意外とその場から距離があるようで、5分程かかりますよ、とのこと。既に出発時刻の5分前だったので多少焦り、新宿駅構内を走る。旅の出だしから何とも慌ただしい。これから道中幾度も痛感させられるが、旅は本当に「人生の縮図」なところがある(『ダージリン急行』みたいにね)。旅の出だしから慌ただしくしているこの状況も、どうやら俺の普段の生活を反映しているようだ。

成田エクスプレスに乗ると、すぐに到着時刻を確認。すると、ぴったり出発の一時間前に成田空港に到着することが判明。なんとかなるだろう、とは思ったものの念には念を押して、104に電話をかけて番号を調べた後、ノースウェストの事務所に電話を入れる。すると女性が電話に出たので、「カウンターへの到着が出発の一時間前になってしまうのですが、平気でしょうか」と尋ねると、「1時間前でカウンターを締めるので搭乗できない可能性があります」との冷たい返事。乗れなかった場合は次の飛行機でお願いします、とのこと。当たり前だが、このような最悪の事態は絶対に避けたかったのでなんとか成功率を上げようと、様々なことを尋ねてみる。まず、ノースウェストのカウンターの場所と登場手続きに必要なものを聞く。するとノースウェストのカウンターは4階北ウィングCというところにあることが判明。とりあえず、電車がついたら急いでパスポートを持ってカウンターにいらしてくださいと言われる。電話で必死になって食らいついていたので多少同情してくれたのか、最後に「お名前を伺っていいですか」と声をかけられ、「カウンターに伝えておきます」とのありがたいお言葉。行きのフライトに間に合わなかったなんぞということになれば、「明日から、香港いってくるわ」と気張って言い放った奴らに面目が立たない。笑

成田エクスプレスを降りると例のカウンターまで猛ダッシュ。何とか間に合う。職員にはそんなに急がなくてもいいのにぐらいの表情をされて、かえって肩すかしをくらう。間に合ったことをよしとしなければならないのに、何を期待しているのやら。
飛行機に搭乗すると、回りは空席ゼロの息苦しい雰囲気。時期的なものなのかわからないが、日本人観光客よりも香港に帰省する方のほうが多いようだ。香港までは偏西風にのって約4時間。普段飛行機に乗っている間は睡眠をとることが多いが、今回は時間が時間だったのであまり眠れず、終始『地球の歩き方』と格闘。パッカーの間では「ダッせー、ロンリープラネットじゃないのかよ。」とささやかれがちな「歩き方」だが、侮るなかれ。以外と細かくて、読み応えがあるのだ。特に、香港のような治安がいい場所に行く場合は「歩き方」で十分だ。

普段あまり旅をしない方は、なんで「治安」と「歩き方」が関係するのか、と疑問に思われるかもしれないが、これが大いに関係する。例えば、インドで「歩き方」を持って歩くのは、「あいつはカモれる」と言って歩いているようなものなのである。実際、インドで観光客をだまくらかそうとしてる現地人の多くは自分の「歩き方」(その多くは観光客が置いていったものだろう)を持っていて、中にはそれを元にだましてくる奴もいる。これに比べて危険度がインドの1/100ぐらい(自分比)の香港では、「歩き方」を持って歩いていても、日本人パッカーになめられる以外何も問題はないのである。そもそも、俺はパッカーではない(「ライフタイムパッカー」かもしれないけど)から、そんなことは全く気にならない。

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乗る予定のなかった、成田エクスプレスの車両内。高いだけあって、非常に奇麗。インドから帰ってきたときにも乗ったが、汚いインドの寝台車とのあまりの違いに逆に頭が痛くなった覚えがある。(笑)

"ベリー・デンジャラス"
ところで、機内の横の席には香港人の女性二人組(学生かと思ったがOLだった)が座っていた。どうやら日本をあちこち電車で見て回った帰りらしい。俺があまりにも熱心に「歩き方」を眺めていたからだろう、いろいろと旅のプランについて尋ねてくる。どのくらい滞在するのか、香港に行くのは何度目か、お前は学生か、等当たりさわりのないことを会話した後、今夜はどこに泊まるんだ?との質問。今夜は、香港一の安宿雑居ビルとして有名な「重慶大廈(チョンキン・マンション)」に泊まることになっていたので、そう答えると、すごい(悪い)反応!彼女等によると、そこは「ベリー・デンジャラス」で、財布に気をつけたほうがいいとのこと。噂には聞いていたが、ここまで香港人の評判が悪いとは思わなかった。ついでだから、あなた方は重慶大廈行ったことがあるか、と聞いてみたが、一回だけ重慶大廈内のカレー屋に入ったことがあるだけとのこと。俺は学生であまりホテルに金をかけられないので、重慶大廈に泊まると言うと、かわいそうなものを見る目で見られる。もちろん俺が初日の滞在先に「重慶大廈」を選んだのは金がないという事情が大きい。しかし、それだけか、と言われるとそうとも言えない。ちょっとした冒険心がそこにはあるからだ。しかし、小奇麗な格好をして日本を旅する香港娘二人組には「重慶大廈」に泊まるのは、貧乏でかわいそうなことと全く等しく見えるのだろう。そう彼女たちにとって建物が「汚いからいい」、「古いからいい」なんていう感情はヒネクレでしかないのだ(「廃墟」等の汚い建物を好む風習は、18世紀~19世紀にかけて西欧で起こったようだが、この感性と一部の現代人の汚い建造物好きのつながりを考えるのは今後の課題といったところか)。

その後、しばらく当たり障りのない話をしていると、次第に食べ物の話になる。日本から香港に赴く旅行者の多くが「グルメ」を目的としている以上、この話の流れは非常に自然だ。香港娘二人組によると、「香港に行く日本人女性のほとんどが亀ゼリーを試す」とのこと。俺の場合、うまいものを食べに香港に行くという感覚は皆無に等しかったが、いい機会だと思い、オススメの香港B級グルメを聞いてみることに。しばらく「歩き方」の食べ物の欄を見ながら、彼女達はしばらくああでもないこうでもないと二人で話し合っていたが、「法蘭西多士(通称、西多士)」というフレンチトーストや「蛋撻(ターンダッ)」と呼ばれるエッグタルト(ここにイギリスやポルトガルの風習が見られて興味深い)、それに茶餐廰(チャーチャンテンと読む。日本でいうところの喫茶店みたいなものか)で「乾炒牛河(Fried Beef Rice Noodle)」を食べるといいと教えてくれ、奇麗な字でノートにメニューを書いてくれる。所謂観光客向けの割高な中華料理ではなく、庶民が食べるもののなかでお勧めを教えてくれたのが嬉しかった。実際香港では、彼女達に教わった食い物を中心に生きていくことになる。

そうこうしているうちに、飛行機が着陸態勢に入る。香港には現地時間で大体10時ぐらいに着く予定で、既にあたりは真っ暗だ。そしてしばらくすると、この真っ暗な景色の中から香港の高層ビル群の明かりが現れる!噂には聞いていたがこれはすごい。「ネオ・トーキョー」か「第三新東京市(あれは地下都市か)」か。金色に輝くビルからなる夜景を眼の前にして、香港娘もどことなく誇らしげな様子。飛行機が無事着陸すると、色々と教えてくれた二人にお礼を言って別れ、遂に香港入り。香港に降り立ってまず感じたのは、湿気がものすごいということだ。これでも香港にしては随分と涼しい方らしいが、日本で言う「熱帯夜」のような感じに近い。これがほぼ毎日続くのだから、香港は「熱帯夜」が常態化した場所だと言える。

空港には銃を持った警官が立っていて多少ピリピリした空気が漂っていたが、基本的にはよく整備されており奇麗。入国審査を終えるとまず両替店へ直行。これはあらかじめ調べがついていたことなのだが、空港の両替店はレートが悪い。なので、ここではあまり香港ドルに換えず、最低限市街へ出られる金額を調達することに決めていた。また、空港から市街に出るにはバスを利用する予定だったので、なるべく細かいお金が欲しい(バスの中では両替できない)。そこで、女性職員に1000円を差し出して「スモーラー・ビルでくれ」と言ってみる(これもインドで学んだやり方だ。インドでは釣りをくれないところも多いので、細かい金をもっていないと大変に損をする)。するとかなり不機嫌な顔で「Why?」という答えがかえってくる。これには驚いた。日本ではこんなことは滅多にありえない。「お客様第一主義」を標榜する日本型資本主義においては、お客の側がサービスを受ける際に何かの説明責任を負うことなどほとんどない。もし、客の要望に答えられない場合でも、表面的には申し訳なさそうなトーンで断りを入れるのが当たり前になっているのは周知の通りだ。この雰囲気ではいくら素晴らしい答えをでっちあげても「スモーラー・ビル」はくれないだろうと判断し、早々に諦めて、「細かくない」香港ドルを渋々受けとる。これではバスの代金を過不足なく払うことはできないが、しょうがない。

空港に隣接したバス停に向かう間、携帯電話を「海外モード」に切り替え、今度は重慶大廈内のゲストハウスに電話。いくら治安のよい香港でも、夜遅くに宿を探し始めるのはかなりリスキーだと思ったので、安宿をあらかじめ日本から予約していたのだ。あまり知られていないが、重慶大廈内にはその気になれば電話であらかじめ予約を取れるゲストハウスがいくつもある。今回宿泊したのは、重慶大廈の中ではおそらく「中の上」か「上の下」ぐらいのランクに属する「DragonInn」というゲストハウス。日本でのやり取りで、空港についたらまず確認の電話を入れることになっていたのだ。電話をかけると妙にテンションの高い男性の声。そして、いまからそっちに向うから事務所明けといてね、みたいなこを話して電話をきる。続いて、市街へ向かう「A21」のエアポートバスに搭乗。噂には聞いていたが、2階建のエアポートバスはデカイ!一抹の不安があったので、いざとなればすぐに降りることができる一階の座席に座り一路、九龍の尖沙咀へ!

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尖沙咀経由、紅磡(ホンハム)行きのA21のエアポートバス。デカイ。
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